2019年9月10日 更新

歯ぐきが下がってきたら歯の根元のむし歯(根面う蝕)に要注意

歯ぐきが下がってきたら歯の根元のむし歯(根面う蝕)に要注意

「根面う蝕(こんめんうしょく)」とは、歯の根元にできるむし歯のこと。不適切なブラッシングや加齢、歯周病などが原因で歯ぐきが下がり、歯の根元が露出すると、そこに新たなむし歯のリスクが生じます。根面う蝕は進行が早く、歯を失うリスクも高いので、適切なブラッシングやフッ素配合ハミガキなどで予防しましょう。

大人ならではのお口の中の変化「歯ぐき下がり」

大人になると生じるお口の中の変化に「歯ぐき下がり(歯肉退縮)」があります。歯ぐき下がりは不適切なブラッシング加齢歯周病などの因子が複合的に関与して起こります。30代では約60%、50代以上ではほぼすべての人に、“歯ぐき下がり”が見られたという報告※1があります。

では、歯ぐきが下がるとどんな問題があるのでしょうか?
●歯と歯の間にすき間ができるので、歯に物が挟まる
●歯の根元が露出するので、歯がしみる
●露出した歯の根元がむし歯根面う蝕※2)になる
といったトラブルが起こりやすくなります。

「最近、歯に物が挟まりやすくなった」「歯が長く見えるようになった」「ときどき歯がしみる」と感じたら、それは歯ぐき下がりのサインかもしれません。

歯ぐき下がり、根面う蝕

※1 杉原ら、根面う蝕の臨床戦略、クインテッセンス出版株式会社、2018
※2「う蝕(うしょく)」とはむし歯の専門的な言い方です。

「根面う蝕」とは、歯を失うリスクの高い厄介なむし歯

ここからは「根面う蝕」についてくわしくご説明しましょう。
歯ぐき下がりにより露出した歯の根元にできるむし歯を「根面う蝕」と言います。むし歯は、むし歯菌が作り出す酸によって歯が溶けることでできますが、歯の根元は酸に弱いため、むし歯になりやすい部分です。また、気づきにくく進行も早いために、歯を失うリスクも高いという特徴があります。つまり、これまできちんとケアをしてきた人でも、新たなリスクの発生により今まで守ってきた歯を失いかねない、とても厄介なむし歯なのです。

「歯の根元」がむし歯になりやすく進行が早い理由

では、歯の根元が酸に弱くむし歯になりやすいのはなぜでしょう。歯は、硬いエナメル質と、その下の軟らかい象牙質の、大きく二つの層にわけられます。歯ぐきが健康な状態にあって露出している部分(歯冠部)は、エナメル質に覆われています。エナメル質はほぼカルシウムやリンなどミネラルの結晶でできている、とても硬い組織です。

一方、象牙質はコラーゲンが約30%を占めており、コラーゲンの間にミネラルが存在するという構造で、エナメル質と比較すると柔らかい組織です。本来歯ぐきに埋まっている部分(歯根部)にはエナメル質はなく、歯ぐきが下がって歯の根元が露出してくると、柔らかい象牙質がむき出しになってしまいます。

この構造の違いにより、象牙質はエナメル質に比べて酸に弱く溶けやすいのが特徴です。ふだんの歯垢のpHは中性付近ですが、飲食をすると歯垢の中の細菌が糖を餌にして酸を出すことで、歯垢の中は酸性に傾きます。その際、エナメル質が溶け始めるpH(臨界pH)は約5.5※3であるのに対し、象牙質の臨界pHは約6.7※3なので、下図のように、飲食により歯垢の中のpHが下がりはじめると、象牙質はエナメル質よりも早く(弱い酸で)溶け始めてしまうのです。

※3 杉原ら、根面う蝕の臨床戦略、クインテッセンス出版株式会社、2018

30代以降になると増えてくる「根面う蝕」

「大人のむし歯」と言われる根面う蝕ですが、では、何歳くらいから発症するのでしょうか。東京歯科大学・杉原直樹教授らによる2016年の報告※4では、「歯ぐき下がり」は20代でも約4割の人にあるとされています。そのため30代くらいから根面う蝕ができはじめ、40代では歯ぐき下がりがある人の約2030%、60代では約半数が根面う蝕にかかっています。つまり、根面う蝕のリスクは30代から高まり、以降、加齢にともなって増加していくのです

※4 杉原ら、根面う蝕の臨床戦略、クインテッセンス出版株式会社、2018

「根面う蝕」のケア方法

年を重ねるごとにかかるリスクが高まり、気づかないうちに進行していることも多い根面う蝕。健康な歯を守るためにも、これまでの歯みがきをちょっと見直してみましょう。

POINT

1.軽い力で丁寧にブラッシングする

根面う蝕を発症させない第一のポイントは、歯ぐき下がりを起こさせないこと。歯ぐき下がりの原因の一つである不適切なブラッシング=力を入れすぎたブラッシング(オーバーブラッシング)に注意しましょう。
また、露出した象牙質に対しても、オーバーブラッシングは禁物です。適切な力加減は、ハブラシを歯に当てた時に毛先が広がらない程度の軽い力。1か月しないうちにハブラシの毛先が広がってしまう人は、オーバーブラッシングの可能性があります。そのような方は、力を入れすぎた場合には、ハンドルの一部分がしなって強すぎる力を逃がし、「カチッ」という音と振動で知らせてくれるハブラシがあるので、一度使ってみてはいかがでしょう。

力の入れ過ぎを防ぐハブラシとは?

2.フッ素を活用する

1)高濃度フッ素配合ハミガキを使う

フッ素には再石灰化を促進する、歯の質を強化する、歯垢中のむし歯菌が酸を作り出すのを抑制するなど、むし歯予防に役立つ働きがあります。もちろん歯冠部のむし歯と同じように、根面う蝕にもフッ素は有効です。おすすめは高濃度フッ素配合ハミガキ※5。高濃度フッ素配合ハミガキには、パッケージにフッ素の配合量(1000ppm1500ppm以下)が表示されています。店頭でハミガキを選ぶときはフッ素濃度も確認すると良いでしょう。

※5 6歳未満のお子様の使用はお控え下さい

2)フッ素洗口剤を使う

子どものころからむし歯が多い、加齢や服薬などで唾液の分泌量が減ったなど、むし歯になりやすい口内環境の方は、ドラッグストアでも購入できる、医薬品のフッ素洗口剤※6を使うことも効果的です。11回ブクブクするだけで、フッ素がすみずみまで行き渡り、使えば使うほど歯の質を強くしてくれます。ご使用の際は、添付文書をよく読んでお使いください。

6 4歳未満のお子様の使用はお控え下さい

歯科医院での定期的な健診が大切

根面う蝕は進行が早いため、早期発見、早期治療・メンテナンスが大切です。加えて、歯ぐき下がりによる象牙質の露出を防ぐためには歯周病の予防も重要です。定期的に歯科医院を受診して、お口の状態をチェックしてもらいましょう。

歯の根元はむし歯になりやすい場所なので、これまで歯冠部にむし歯がなかった人でも根面う蝕になる可能性はあります。歯ぐきが下がって歯の根元が見えはじめたら、それは新しいむし歯のリスクのサインです。今までとは違う、大人ならではのお口の状態に合わせた、毎日のオーラルケアを実践しましょう。

TEACH ME, MEISTER!
教えてマイスター!

歯ぐきが下がっているか、自分でチェックする方法は?

WEBコンテンツで、簡単歯ぐきチェック

日ごろから、自分の歯や歯ぐきの状態を把握しておくことは、歯や歯ぐきの健康のためにとても大切なことです。ライオンでは、スマートフォンなどで撮影した画像をAIで解析し、歯1本ごとの歯ぐきの状態がわかる歯ぐきチェックツール「HAGUKI CHECKER(ハグキチェッカー)」という、WEBコンテンツを提供しています。

歯1本ごとの歯ぐきの状態について、
・歯ぐき下がり
・歯ぐきのくすみ
・歯ぐきのハリ
の3項目について3段階での解析結果が表示されます。
さらに、歯ぐきの状態の結果とあわせて、オーラルケアに関する知識や方法、おすすめのオーラルケアアイテムを紹介します。

以下のURLもしくはQRコードからアクセスできます。毎日のオーラルケアに、是非、ご活用下さい。

https://haguki-check.lion-apps.jp

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「根面う蝕」はどうやってできるの?

「ミネラルが溶け出す」「コラーゲンが分解される」という2つのプロセスで進行

象牙質は、主にミネラルとコラーゲンでできています。
象牙質に歯垢が付着すると、

①歯垢(プラーク)の中の細菌が酸を出して、象牙質表面からミネラルが溶け出す(脱灰)。
②ミネラルが溶け出すことでコラーゲン層が露出。さらに、細菌もしくは唾液などに含まれる酵素(コラゲナーゼ)によって、コラーゲンが分解される。

この2つのプロセスにより、根面う蝕が発症します。

①のプロセスは、ふつうのむし歯(健康な歯ぐきの上の部分(歯冠部)にできるむし歯)でも起こりますが、②は根面う蝕特有のもので、ふつうのむし歯との違いです。

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